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板垣整骨院

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鎖骨外端(遠位端)骨折の整復及び固定法

日本柔道整復・接骨医学会 第12回学術大会 2003年(H.15)

鎖骨外端(遠位端)骨折の整復及び固定法

<はじめに>
鎖骨骨折は、全骨折の中で10~15%を占め、その多くは、介達外力による。
又、発生部位は鎖骨中央1/3が90%以上を占め、外側1/3、内側1/3の順に多い。
その中で外側1/3の骨折は、烏口鎖骨靭帯の断裂によって手術適応となる骨折のひとつであり、この烏口鎖骨靭帯の断裂があるか否かを見極めるのが難しいところである。 
しかし吉田らの報告によると、鎖骨外端(遠位端)骨折で成長期(15才以下とする)の小児は、烏口鎖骨靭帯が断裂せずその靭帯と骨膜の連続性は保たれ、骨と骨膜間が剥離するだけで手術なしで保存的療法で行えると記しております。 
今回、小学生で、鎖骨遠位端骨折の転位大なる患者さんが来院し、直後に整復せず、毎日徐々に整復姿位に近づけるように胸部を張らせ約1週間後に整復し、良好なる一症例を経験したので、ここに報告します。

<成長期の小児鎖骨の構造と骨折の特徴>
小児の鎖骨構造は、骨幹部、内側・外側骨端部の3つの部分に分けられ、周囲は厚く丈夫な骨膜で覆われている。
そして、骨膜は、骨との連結が比較的弱く、むしろ、周囲靭帯との連結が強固である。 
骨幹部は膜性骨化によって形成し、内側と遠位部は靭帯による補強構造があるが、中央には靭帯による補強はない、内側・外側骨端部は、軟骨内骨化によって骨化するが小学生以下ではまだ骨化していない。
又、内側骨端部は22~25歳で、骨幹部と癒合するが、外側骨端部は軟骨性の骨端が30歳代まで維持されていることもあり、骨化の終了が人体中最も遅いところである。 
小児鎖骨骨折の特徴は、不全骨折(若木骨折)の形をとり、一般に転位することは少ない。
又、転位がある場合でも丈夫で厚く弾力性に富む骨膜は損傷を免れ、その連続性は一般に温存されている。
そして仮骨が旺盛で速やかな癒合傾向を示し、関節拘縮も生ぜず、成長とともによく自己矯正されていく。

分類・・・
1.中央部の骨折:通常、骨膜チューブが温存される。
2.遠位端部の骨折:遠位骨幹端の骨折である。骨一骨膜間は剥離するが、骨膜一靭帯間の連結は温存される。
3.外側骨端離開、4.内側骨端離開:ともに単純X線では関節脱臼との鑑別が困難である。しかし、小児では真の脱臼はごくまれである。

<症例>
10歳男子 
朝2段ベッドから降りる際、足をすべらせ左肩から転落、左肩部を強打し負傷。
同意医師にてX線検査の結果、鎖骨骨遠位端骨折と判明、神経麻痺なし。

処置と経過
先づ、3裂包帯、三角巾、リング固定具(綿花を硬く丸め棒状にし、綿ネットで作成したもの。)、棒状タオル(タオルを丸めて、中に硬い木などを入れる)、枕子(5裂包帯を硬く巻いたもの)、を用意する。
1日目:疼痛が強く、仰臥位が出きない為、無理な整復はせず、疼痛の和らぐ姿位にて、デゾー包帯と三角巾による患側上肢保持を施行、半座位にて安静を指示。
2日目:疼痛やや軽減し、1日目より少し胸部を張るように拡大し、デゾー包帯と三角巾で保持す。
4日目:毎日、徐々に左患側上肢を後上方に、又、胸部を張るように拡大し、X線検査の結果、ほぼ整復位に近づく。
1週間後:整復完了、整復位の安定を保つ為にリング固定に変更し、又、胸部の張りを維持する為に背中に棒状タオルを入れる。そして、骨折部を枕子にて圧迫、デゾー包帯と三角巾で保持す。
9日目:X線検査の結果、整復姿位安定
3週間後:X線検査の結果、整復姿位安定し、やや仮骨形成がうかがえる。
4週間後:X線検査の結果、整復姿位安定し、仮骨形成良好、圧痛消失し、リング固定除去、麦穂帯に変更し、三角巾にて上肢保持翌日より、自動運動開始す。
5週間以降:包帯除去、軽いラジオ体操指示
7週間目:筋力低下、関節拘縮などの機能障害がなく日常生活に支障がない為、治癒す。

<考察>
1.4週間後のX線検査で仮骨が、鎖骨遠位端の下から中央にかけてあらわれている。これは烏口鎖骨靭帯に断裂はなく、その靭帯に骨膜の連続性が保たれていたものと考えられる。

2.成長期の鎖骨骨折は、筋萎縮、関節拘縮がなく、固定除去後も、運動制限が少なく早期に治癒に至った。

3.最初は疼痛が強く、筋肉も硬直し、整復のしにくい状態であった為、痛みの少ない姿位に固定し、毎日、徐々に整復位に近づけてゆくようにした。そのことによって、患者さんの苦痛を最小限にし、整復ができた。

<結語>
特に成長期における鎖骨遠位端骨折は、烏口鎖骨靭帯の損傷はなく、デゾー包帯、リング固定、麦穂帯、三角巾による上肢の保持を、その時々に応じて使い分け、的確な固定をすることで骨折部も整復され、保存的療法で十分な結果が得られました。 
又、小児鎖骨の構造で述べたように、外側骨端部は、30歳代まで軟骨性の骨端が維持されているということは、骨膜と靭帯の連結が強いということである。
よって30歳代で遠位端骨折があっても保存的療法で可能ではないかと思われる。
しかし、烏口鎖骨靭帯の断裂の有無が難しいところで今後の課題にしたい。
この発表をするにあたり御助言を頂きました、吉矢医院院長 吉矢 義継 先生宮川接骨院院長 山村 徳三 先生に厚く御礼申し上げます。

<参考文献>
(1) 吉田篤ら:成長期鎖骨骨折と復帰条件・臨床スポーツ医学:文光堂
(2) 神中整形外科学
(3) 整骨学